馬の骨や筋や皮を使って作られたと言われる「馬頭琴」、
殺した羊を葬るために歌うと言われる「ホーミー」
――このような伝説や言い伝えが残るように、モンゴルの音楽は、やはり自然風土や 大切にしている家畜とは切っても切れない関係のようです。

音階は5音階で、そのメロディーはとても特徴的です。
民謡と現代曲の区別も少なく、どこでも歌っているモンゴルの人々を見ると、本当に歌が好きな人が多いと実感できます。
内モンゴルにできたカラオケ屋がすぐに潰れてしまい、その理由も「モンゴル人はどこでも伴奏がなくても歌うから、あまりはやらないのだ」と言うエピソードもあります。

モンゴルでとても特徴のある「技術」で「チョール」と言うものがあります。「和音」と言う意味の言葉ですが、実音に対し倍音やハーモニックスの音を同時に演奏するものです。

馬頭琴にもチョールと言う楽器もありますし、笛でもこの奏法を使用する事があります。
また歌のアンサンブルにもチョールは有り、あのホーミーもチョールの発想から来ているのではないだろうかと筆者は考えます。倍音やハーモニックスの音ですから「ピィー」と言う高い音がどこからともなく聞こえてきます。これはモンゴルを吹く風の音を表現しているに違いないと、個人的には思っています。

また声や楽器で馬・ラクダ・鳥などの鳴き声などの疑似音を出す事も多いです。

モンゴルの国土は、内モンゴル・モンゴル国を合わせて日本の約7倍の面積がありま す。
きっとこのチョールも 全モンゴルにあると言う事ではないでしょうし、色々な地方にはそれぞれモンゴルらしい音楽があることでしょう。新たに別のモンゴル音楽に出会えることを楽しみにしています。

よく耳にするのが 馬頭琴はバイオリンなどの原点ではないだろうか、とか中国の胡弓は 元々はモンゴルの楽器ではないか(中国人は昔北方民族を胡人と呼んでいました)と言ったモンゴルびいきの声です。
あの広い広いユーラシア大陸ですから、じつのところ何が本当かよくわかりません。
私は、モンゴルの人々が今も昔も、自然や生活にあった自分の好きな歌をうたい楽器を奏でている、それだけが事実のような気がします。

(筆 N.MATSUO 内蒙古音楽家協会会員)



  
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