オルティンドーはモンゴル固有の民謡です。
直訳すれば「長い歌」と言われる名前の通り、息の長い発声をし、特に高音を強調しています。細かい装飾音を特徴としていて、モンゴルの広さや流れる雲、風、草原の草が揺れる様子を実に大らかに表現しています。特に発達しているのが内モンゴルシリンゴロ地方でオルティンドーの多くの優秀な歌手や演奏家がこの地方出身です。

 一般にはひとりで歌われることが多いのですが、馬頭琴による独奏や伴奏、また他の楽器での伴奏もあります。

 歌詞は非常に簡潔で、やはり自然を歌ったものが一番多く、基本的なメロディーに対し自由に歌い上げ、歌い手(演奏家)によりそれぞれの個性があります。

 日本の民謡、特に追分の原点ではないかと言う説もありますが、本歌を正確に受け継いで行く日本の民謡と一番違う所は、この自由さと、やはり日本とはあまりに違いすぎる生まれた環境とでしょうか・・・。

 しかしながら、この自由さが弱点になることもあります。古い曲を受け継ぐと言った事にはやはりそのままと言う訳にはいかないようです。でもこの「変化」も含めてオルティンドーらしい、またモンゴルらしいといったところでしょうか。

 広いところで大きな声を出したくなるのは、人としてとても自然な事だと思いますが、このオルティンドーもきっとあのモンゴル大草原で、自分の気持ちを解放するかのごとく大きな声を発していたのが、歌として長い年月の間に発達してきたのではないかと筆者は考えます。

 遊牧民が大草原で一人馬に乗りながら羊を追い、そして馬の背でこのオルティンドーを歌っているところを想像してみて下さい。余談ですが、オルティンドーのカセットテープ購入が一番多いのは・・・言わずとしれた遊牧民です。

 今、モンゴル音楽の中で日本でよく知られているのは、馬頭琴とホーミーですが、「楽器の馬頭琴」、「発声技術のホーミー」に加え、本当にモンゴルの自然や人をよく表現しているオルティンドーが日本に浸透していく事を願っています。

(筆 N.MATSUO 内蒙古音楽家協会会員)

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